妙音十二楽

吹上町田尻で行われる「妙音十二楽」を初めて拝見しました。妙音天を本尊とする盲僧寺「中島常楽院」で、釈文を唱えながら奏でられる、薩摩琵琶をはじめとした合奏です。
中島常楽院

●妙音十二楽 

  • 楽器:薩摩琵琶を中心に、笛、太鼓、手拍子(小型のシンバル)、妙鉢、銅鑼、大法螺、小法螺
  • 楽曲:「松風」「村雨」「杉の森」「軒ノ水(のきのみず)」「五調子」「忘れ撥(ばち)」「七つ撥」「八つ橋」「六調子」「盤渉(ばんしき)」「鳳の声(ほうのこえ)」「後上楽(ごじょうらく)」。楽曲が12あるので、妙音十二楽です。
  • 釈文:「うちまき」「年号」「妙音の巻」「わたまし」「釈迦の段」「琵琶の釈」「はんごんの釈」「勝負わけ」「本経(ほんぎょう)」「夢の段」「星の段」「回向」の12。
妙音十二楽

●中島常楽院

常楽院は、京都逢坂山の正法山妙音寺常楽院の住職宝山検校(ほうざんけんぎょう)が、鎌倉時代(1196年)、島津氏の下向に伴い薩摩に移って建立した盲僧寺です。現在の建物は昭和13年に建立されたものです。
宝山検校墓前供養

〔感じたこと〕
妙音天
妙音十二楽の法要は45分ぐらい。その後、薩摩琵琶の奉納演奏、宝山検校墓前供養と続きました。軽快な調べと、釈文の深い響き、たいへん奥深く感じました。かつてカトッドン(家督殿 - 鹿児島の盲僧)も家々を回り、人々に、このように大切な釈文と、京の調べを、伝えていったのでしょうかね。
 どこから撮影したらいいのか分からず、うろうろして、ひんしゅくでした。次回行くときは、ゆっくり腰を据えて聴いてみたいと思います。テンポよいリズム、ほんとうに心地よかったです。
 地域保存会や教育委員会の方が、たいへん優しく案内してくださいました。境内駐車場がいっぱいになったときは、路肩への駐車が可能な場所へ誘導してくださいます。境内では無料で資料の配布もありました(学術的にも使えるレベル)。また、法要前には教育委員会の先生による解説があり、大変有意義に妙音十二楽を拝見できました。

薩摩琵琶
○調査地:鹿児島県日置市吹上町田尻(ひおき・ふきあげ・たじり) 中島常楽院
○調査日:2015年10月12日(現在毎年新10/12) 午後1時から午後2時頃まで
○文化財指定:
・常楽院…鹿児島県指定史跡
・妙音十二楽…鹿児島県指定無形文化財(芸能)
※薩摩琵琶…鹿児島県指定無形文化財(芸能)

〔参考文献〕
「妙音十二楽」リーフレット(平成27年度版。会場配布),2015,妙音十二楽保存会(日置市教育委員会吹上支所教育振興課内)
 『角川日本地名大辞典46 鹿児島』1983,角川書店
小野重朗『鹿児島の民俗暦』,1992,海鳥社

→Webアルバム:妙音十二楽