市来の七夕踊り

月遅れの七夕行事「市来の七夕踊り」を8年ぶりに拝見しました。「本踊り」と呼ばれる太鼓踊りの先払いに、鹿・虎・牛・鶴の大張り子、大名行列・琉球王行列・長刀行列と続く、大掛かりな伝統行事です。国指定重要無形民俗文化財。
鹿の張り子
保存会の方にお聞きすると、昔は青年が主体的に役割を決め、祭りを執り行っていたと言います。しかし今は、祭りの担い手が少なくなり、住民だけではなく大里に勤務先がある方など、たくさんの縁がある方に協力をいただき、続けられているとのことでした。よく見てみると、鹿捕り役や虎捕り役、鶴を背負う方も、8年前と同じ。ベテランの皆さんが引き続き活躍されていました。
虎の張り子
また、張り子の面は、竹を編んで笊状にしたものに、紙を貼って着色していますが、土台になる笊を編める方が少なくなって困っているという話もありました。
牛の張り子

<聞き書きメモ>
○鹿は、毎年宇都集落が担当。胴の足元を隠す山葡萄(方言名ガラメ)の蔓は、付近の山に生えているのを、前日に採ってくる。特に決まった場所があるわけではない。鹿の顔(面)は、竹で編んであるが、編める人がなかなかいない。今年は竹は昨年と同じものを使い、表面の紙だけ貼り直した。
○虎は、毎年島内集落が担当。
○牛は、今年は平ノ木場(ヘノコバ)・堀集落が担当。1匹のみ。以前は各集落から何匹か出していたが、今は人手不足。牛の胴体は、竹を組んで作っている。胴の足元を隠すガラメは、1週間前と昨日、2日間に分けて採ってきた。顔(面)は、今年、作り直した。2・3年に一度、傷んできたら作り直す。大きさを図って、同じになるように作る。実測:横156センチ、横120センチ。
鶴の張り子
○鶴は、毎年門前集落が担当。
○本踊り(太鼓踊り)は、担当集落はなく、各集落から数名ずつ出す。青年が少なくなって、困っている。実測:太鼓…直径35センチ、桴…長さ43センチ。桴は昔からクサギで作る。中に空洞がある。軽い。
本踊りの太鼓と桴

台風の影響が心配されましたが、今年も賑やかな七夕踊りを拝見することができました。「威勢のいい祭りなので、とにかく怪我のないように気を付けている」とのこと。「ツクリモノ」と呼ばれる巨大張り子は前が見えないので、お酒も入ると、大変な勢いで突進していきます。
市来の七夕踊り
虫送り的要素と地域の偉人の霊を鎮める太鼓踊り、それを盛り上げる張り子行列。伝承者不足に苦慮されながらも、さまざまと工夫をされ、先輩たちの指導のもと、これからも末永く伝承される夏の風物詩と言えそうです。
大名行列
大名行列の奴踊り
琉球人行列の踊り
琉球人行列
長刀行列
長刀行列
本踊り

●調査地:鹿児島県いちき串木野市大里地区(撮影は、払山公民館前の農道)
●日時:2014年8月10日(月遅れの七夕に近い日曜日)。払山公民館は午後3時から。
●解説:市来の七夕踊り - 鹿児島祭りの森